「パパからもらったクラ〜リネット」で有名なクラリネット。ちんどん屋さんで吹かれている黒い楽器もクラリネットです。(ちんどん屋さんのまねをしたい人は、「美しき天然」という曲を練習してね!)ジャズや吹奏楽、更にはオーケストラでも大活躍するこの楽器は、今から約250年前にフランスとドイツで開発され、その後ヨーロッパ各地に広がり改良されて行きました。モーツァルトがこのクラリネットのうわさを聞きつけ、大好きになった事は有名なお話です。




シャリュモー

クラリネットの歴史
クラリネットの歴史は比較的新しく、18世紀初め頃にドイツ人のフルート製作者デンナーさんが、フランスの古楽器「シャリュモー」を改良し製作したことに始まります。
(左下図。シャリュモー:シングル・リードとマウスピースを付けた円筒形の木管楽器で、18世紀後半までオーケストラで使用されていた。)

キイが付いていなかったシャリュモーにキイを取り付けてその数を増やし、また、穴の位置も変えることにより音域が広がりました。この楽器の音が、昔の高音トランペットである「クラリーノ」という楽器に音色が似ていたため、「クラリネット」と名付けられました。

18世紀中頃から後半にかけて、楽器と共に演奏法も発達しました。ドイツ派のクラリネット奏法の名手としてタウシュさんやシュタットラーさんらが活躍し、クラリネットの魅力を最大限に引出しました。特にモ−ツアルトはシュタットラーさんに相談しながら、クラリネット協奏曲クラリネット5重奏曲などの名曲を生み出しました。

しかし、クラリネットが大いに発達したのは19世紀初めにドイツ人のミュラーさんがキイが13個付いたクラリネットを発明してからのことです。この楽器は後に「エーラー式」(ドイツ式)と呼ばれる楽器に発展しました。今もドイツ周辺で使用されており、温かみとすこし暗めで艶(つや)やかな音色を持つクラリネットです。

また、フランスでは1839年にクラリネット奏者のクローゼさんがビュッフェさん(現在のクラリネット製造会社であるビュッフェ・クランポンの創設者)と協力して、フルートの機構である「ベーム式」を取り入れた楽器を発明しました。

この楽器は「ベーム式」(フランス式)と呼ばれ、華やかな明るい音色を持ち機能性に優れており、フランスをはじめ日本やアメリカなど世界各国で使用されています。

しかし、近年ではこの「ベ−ム式」の運指機構を取り入れた「エ−ラ−式」(ドイツ式)のクラリネットが作られたり、「エーラー式」のような音色を持つ「ベーム式」(フランス式)のクラリネットが作られたりなど、それぞれの良い部分をお互いに取り入れた新しいクラリネットが生み出されています。




リード





グラナディラ

クラリネットの仕組み
「円筒管の閉管木管楽器」で、(左側写真上から順番に)ベル(朝顔)下管上管バレル(たると呼ばれる)、マウスピース(ベックとも呼ばれる、歌口)の5つに分けられます。

マウスピースに、リードと呼ばれる葺(あし)の木を削って作った1枚の板状のものを取り付けます。

このリードは1枚の葺の板なので「シングル・リード」と呼ばれます。また、リードをマウスピースに取り付ける道具を「リガチャー」といい、金属、ヒモ、皮やプラスチックなど、様々な素材で作られたタイプがあります。

クラリネット本体の材質は、赤道直下に生えているアフリカ産の「グラナディラ」という木材が主流です。この木は皮をはがすと中が黒くなっている不思議な木です。つまり、クラリネットの黒い色は天然の色なのです。また、グラナディラ以外にも黒壇(こくたん)、ローズウッドなどがあり、屋外でも演奏可能なプラスティックで作られているものもあります。

(19世紀初めころまではツゲで作られたクラリネットが主流で、金属で作られた通称「スケルトン」と呼ばれているクラリネットもありました。)

支え








レジスター・キイ


マウスピース

クラリネットの演奏法
右手の親指を「支え」と呼ばれる金属の突起物の下に置き、左手で上管、右手で下管を扱います。一般的なクラリネットは、左右の小指はそれぞれ4個ずつのキイを扱い、左右の小指で扱うキイが左右連結しているものもあります。

左手の親指で「レジスター・キイ」を扱い、このキイを押さえると12度高い音が出ます。(オクターブ・キイではありません。)
そのため、低音域からブリッジと呼ばれる音域にかけてはアルトリコーダーとよく似た運指で、クラリオン音域ではソプラノ・リコーダーとよく似た運指を用います。

音を出す時は、シングル・リードを備えたマウスピースが発音源となり、ここが音程、音色や音質に関わる重要な部分となります。
演奏者は良いリードとマウスピースを選び、常に持っているように気を配らなくてはなりません。特にリードは消耗品であり、湿度や気温の変化によって状態が変わりやすい為、常に注意をしている必要があります。

上の歯を直接マウスピースに当て、下の歯に軽く下唇をかぶせてリードとマウスピースを包み込むようにして、息を吹き込み楽器を鳴らします。

クラリネットの特徴
音域が約3オクターブ半と広く、表現力が豊かなので、オーケストラにおいては重要な役割を持っています。また、吹奏楽においては中心的な地位を占めています。(オーケストラの曲を吹奏楽用にアレンジして演奏する場合は、ヴァイオリンパートをクラリネットが担当します。)

スケール(音階)やアルペッジョ(分散和音)を速く演奏したり、レガート(なめらかに音をつなげる)やスタッカート(短く音を切る)で演奏することや、ダイナミクス(音量の強弱)のニュアンスをつけて演奏することにおいて、クラリネットは木管楽器の中で最高の能力を持っています。

また、音域によって音色の特徴に違いがあるため、各音域に名前が付いています。(下図参照)

低音域を「シャリュモー音域」と呼び、音色・音量ともに豊かでバス・クラリネットのような個性的な響き持っています。

「ブリッジ音域」は、最も音勢に乏しく音色も悪いので演奏者は苦労をする音域です。
「クラリオン音域」は、光彩豊かな輝かしい音色を持っています。演奏も容易でクラリネットの味わいが一番発揮できる音域です。
「高音域」は、鋭く刺激的な響きを持っています。現代音楽では、さらに高い音域を要求されることもあります。


E♭管(左)
B♭管(右)


アルト・クラリネット


バス・クラリネット


コントラバス・
クラリネット
クラリネットの仲間
クラリネットには30cmほどしかない小さなクラリネットから管の長さが2m以上ある大きなクラリネットまで、多くの仲間があります。そのため、クラリネットだけでオーケストラのようなアンサンブルを行うことも出来ます。


クラリネットオーケストラ

かつては全ての調のクラリネットが作られていたそうですが、主に音色の悪さなどから、現在ではほとんど使われなくなった調のクラリネットや、ごくまれにしか使われない楽器もあります。

小さい順に説明すると、A♭管(ピッコロ・クラリネット)の極小のクラリネットはクラリネット・アンサンブルなどでまれに使用されます。
高音域を担当する比較的小さな「エス・クラリネット」E♭管は、オーケストラや吹奏楽で活躍します。

一般的に広く使用されている「クラリネット」はB♭管のクラリネットです。

また、B♭管より半音低いA管のクラリネットは、オーケストラや室内楽、ソロなどで使われます。

楽器の大きさがアルト・クラリネット以上になると、バレルのかわりに金属で作られた、曲ったネックとベルが取り付けられ、首から下げるためのストラップを使用したり、エンドピンを取り付けて地面で楽器を支えます。(この大きさからはもはや通常のまっすぐなクラリネットの形ではありません。)

アンサンブルで使われる「アルト・クラリネット」E♭管、「バセット・ホルン」F管(ホルンと名前が付いていてもクラリネットの仲間です)、オーケストラや吹奏楽で低音域担当で使われる比較的大きな「バス・クラリネット」B♭管、クラリネット・アンサンブルなどでベース担当として使用される、大きな「コントラ・アルト・クラリネット」E♭管、特大の「コントラバス・クラリネット」B♭管、などの様々なクラリネットがあります。

クラリネットに向いている人
クラリネットは広い音域と豊かな表現力を持つため、様々な役割を担当しなくてはなりません。繊細な感受性と人前でおじけづかない度胸を持ち、時には他人を引き立て、全体を見渡せる広い視野を持った人であれば、クラリネットに向いているといえるでしょう。

実際には、一見まじめで普通っぽいけれど、アッと驚くようなキャラクターを秘めた人が多いようです。

クラリネットに興味がある方へ
シンフォニー音楽教室
シンフォニー音楽教室では、生徒さんが目的に合わせ様々な楽器が学べるよう、クラリネットをはじめ、ピアノ、ソルフェージュ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、フルート、サクソフォーン、トランペット、コルネット、トロンボーン、ホルン、ドラム、ウッドベース、エレキベース、アコースティックギター、エレキギター、ポピュラーボーカル、ヴォイストレーニングなど専攻楽器の種類を可能な限り増やし、クラシック音楽からジャズ、ポピュラーミュージックまで一流音楽大学を卒業された講師を招いて、個人レッスンにこだわったスタイルで運営しております。