今回のおもしろ楽器館は楽器の大きさが約2メートルと巨大で、「コントラバス」、略して「コンバス」、「弦バス」、「バス」、「ダブルベース」、「ベース」、「ウッドベース」など多くの呼び名を持つ、最も大きな弦楽器のコントラバスを紹介します。

コントラバスの歴史 コントラバスの仕組み コントラバスの演奏方法 コントラバスの特徴 コントラバスに向いている人



コントラバスの歴史
コントラバスが最初に現れたのがいつかは、はっきりとは分かっていませんが、16世紀にヴィオル(Viole)族の最低音楽器であるヴィオローネ(Violone)から発達したとされています。

17〜18世紀には楽器構造や弦の数などが異なる色々なものがありましたが、19世紀にはヴィオローネに付いていたフレット(現在のギターの様に正確な音程を付けるために棹に埋め込まれた突起物)がなくなり、20世紀初頭には弦の数も現在の4弦になりました。

3弦のコントラバスも響きが良いと言う理由から長く好まれました。楽器の大きさは現在の4弦のものより小さく、力強く甘い音色で、高音はチェロに似ていました。ベートーヴェンもこの3弦のコントラバスの為の曲を作曲しています。

渦巻き


F字孔


歯車ネジ





馬のしっぽの毛


ミュート

コントラバスの仕組み
コントラバスはヴァイオリン属の中で、唯一祖先の系統が違います。胴は撫(な)で肩になっていて、棹の方に向かって細くなっています。これは祖先の「ヴィオル」の特徴です。

また、調弦はヴァイオリンやチェロのように5度間隔ではなく、低い弦からE-A-D-Gとギターの低音弦の4本と同様の4度間隔です。

本体の材質はスプルースと呼ばれるマツ材で出来ています。弓に至ってはブラジルウッド材、ヘルナンブコ材(ブラジルウッド材の中で最高品質)、スネークウッド材を初め、最近ではテニスのラケットなどに使用されるカーボン材やファイバー材など様々です。

棹の先端にある渦巻きF字孔などはヴァイオリン属と同じ形をしています。

楽器の上の方に、弦を止める糸巻き(マシンヘッド)があります。他の弦楽器はここに木の摩擦を利用したものを用いていますが、コントラバスは太い金属弦を使用するため、金属製で丈夫な歯車ネジが使われています。
弦を支える「駒」(こま)や弦を止める「テールピース」もヴァイオリンやチェロと比べると、巨大で丈夫なものとなっています。




4本の金属製の弦と弦を止めるテールピース

楽器の大きさは様々で、日本と外国ではこれらのサイズの基準が違います。外国のサイズはフルサイズ4/4、または、7/8、3/4などです。日本では、外国の3/4がフルサイズの4/4という標準サイズに設定されています。この標準サイズは全長が約195センチ、弓の長さは67センチです。また、弓の毛の数はヴァイオリン(220〜250本)の230%とかなり多くなっています。

因みに、この弓の毛の材質はヴァイオリンなどと同様に「馬のしっぽの毛」を使用しています。
(左側の写真は黒毛。毛の質が粗いので、ヴァイオリンやチェロは白毛を使用します。)

ミュート(ゴム製の弱音器)やF字孔に差し込む保湿剤の「ダンピット」などは、ヴァイオリンやチェロよりもかなり大きな物を使用します。


ダンピット

ダンピット

ダンピット

ドイツ式


エンドピン


エンドゴム
コントラバスの演奏方法
弓の種類と弓の持ち方は、2種類あります。右手の手のひらを上にして持つ「ドイツ式」と、ヴァイオリンやチェロなどと同じように手の甲を上にして持つ「フランス式」とがあります。




日本ではドイツ式が広く用いられています。その理由は、日本で最初にチェコに留学した演奏家がドイツ式を学び弟子達を通して広めたからだと言われています。
(左の写真はドイツ式の弓とドイツ式の持ち方)

左手は親指で楽器を支え、親指以外の4本の指で弦を押さえます。

コントラバスは調節可能な脚(エンドピン)で床に立てられ、演奏時は楽器の胴と奏者の左膝で支えます。

オーケストラでは、ほとんどがコントラバス専用の高い椅子に座って演奏します。

ピチカート奏法


アルコ奏法


裏板が平ら
コントラバスの特徴
コントラバスはオーケストラや吹奏楽では無くてはならない存在です。低音で落ちつきのある音色は音楽を支える重要な役目を担っています。

コントラバスは楽譜に記譜してある音程よりも実際には1オクターヴ低い音が出ます。これは実音で記譜すると音が低すぎて楽譜が読み難いということもありますが、チェロと一緒にコントラバスが低音パートを弾く時に、同じ楽譜で8度(オクターヴ)のバスラインが同時に形成できて大変便利ということが大きな理由のようです。古典派の曲では、チェロとコントラバスは共通の楽譜になっていることがほとんどです。

コントラバス奏者は他の弦楽器奏者よりも、「ピチカート奏法」(弦を指で弾く)で奏することが多いようです。これは単にコントラバスのピチカートは共鳴が良いというためばかりでなく、曲に軽やかさと透明さを与え、バスの線に変化をもたらすためです。チェロが弓で弾いているパートをコントラバスが重複することもあります。弓で奏する奏法は、ヴァイオリンやチェロと同様に「アルコ奏法」と呼びます。

楽器の裏板の形状がヴァイオリンやチェロのように膨らみが有る種類と無い種類があり、後者の膨らみが無く平らな方の種類が一般的となっています。
コントラバスに向いている人
楽器はほぼ人間と等身大であり、太くて長い弦を押さえ続ける為、背が高く、手が大きい方が良いに越したことはないのですが、小柄の方も沢山活躍されています。

コントラバスの合奏機能としては、アンサンブル全体を支える、縁の下の力持ち的な存在です。メロディ楽器はアンサンブル(特にオーケストラ)に於いて、自らをアピールする為に共演者を求めますが、コントラバスはほぼ「求められる」という受動的な立場にあり、逆にいえば、他楽器との関係に於いては「与えるのみ、何も受けず」という最も優位に立った存在と言えるのではないでしょうか。

その為、「自らの音によって他者の音が価値を増大する」という演奏上の快感を得てみたい方、是非コントラバスに挑戦してみては如何でしょうか?