〜ドラム・セット後編/スネア・ドラムの仲間たち〜
ドラム・セットは前編で紹介したように、スネア・ドラムを中心に大小さまざまな楽器や部品が組み合わさり1つの打楽器のセットとして構成されています。作曲者の指定によってさまざまな打楽器を複数の演奏者で使い分けるクラシックの世界ではドラム・セットと呼びますが、いつもドラマーが一人でドラム・セットを演奏するポップスの世界では省略してドラムと呼ばれています。

バスドラム スモール・タムタム フロアタム ハイハット・シンバル トップシンバル(ライドシンバル) サイドシンバル(クラッシュシンバル) ドラマーに必要な資質


バスドラム


ビター
バスドラム
一言で言えば『大太鼓』です。通常大太鼓は、専用のスタンドに乗せて先端にフカフカの毛玉の付いたスティックを右手に持ち叩くのですが、ドラム・セットの大太鼓はまるで違います。通常の大太鼓としては小型から中型(18インチから26インチ)の専用の大太鼓を直接地面に置き、フット・ペダルを使い右足(以降全て右利きの人とします)で踏んで演奏します。

当然スティックでは叩かず、ペダルとスプリング により連動するビターと言う硬い毛玉で音を鳴らします。ペダルの踏み方もさまざまで、カカトをペダルにつけた状態で演奏する『ヒール奏法』やカカトを上げて足全体で踏み込む『アップ・ヒール奏法』さらに、ヒール奏法とアップ・ヒール奏法を合わせた『ダウン・アップ奏法』などがあります。

音楽のジャンルやビートの種類(拍子やリズムの種類)によって、自然に踏み変えができるのがベストなのですが、見た目より大変難しく熟練するためには先生に習う必要があります。また、自己流で過ったクセがついてしまうとなかなかとれません。『努力しても基本的なリズムが叩けない』などの壁に阻まれている場合は大抵ここに原因があります。

ペダル・テクニックはドラムの一番の特徴であり演奏する上でとても重要です。バスドラムの中に毛布が入っているのをよく見かけますが、あれはミュートと言って表と裏のヘッド(皮)の残響を無くすために入れているのです。

スモール・タムタム


タム・ホルダー
スモール・タムタム
通常バスドラムから突き出しているタム・ホルダー(金属製のアーム)にセット して演奏する太鼓のことです。通称小型のタムタム(8・10・12・インチ)をハイ・タムと呼び、中型のタムタム(13・14インチ)をミッド・タム、大型のタムタム(15・16インチ)をロー・タムと呼んでいます。皮の真ん中を強く2回叩いてみると確かにタム・タムと言う音がするような…。みなさんも機会があったら確かめてみて下さい。



フロアタム
3本の足で地面に直接立てるタイプの縦長で大きめの太鼓のことです。スネア・ドラムの右横にセットして演奏します。14・16インチが一般的な大きさです。

(★写真はロー・タムをフロア・タムとして代用しているため、一般的なフロア・タムではありません)


ハイハット・シンバル
大きさは同じですが重さ(シンバルの厚み)の違う2枚の小型のシンバル(14インチ)を左足のペダルを使い重ね合わせたり、少し開いたりさせて演奏します。

ペダルは踏み込むと2枚のシンバルが強く重なり、離すとスプリングのテンションによりそれらのシンバルが離れます。2枚の同じ大きさのシンバルは、重い方をボトムと呼び下側に、軽い方をトップと呼び上側にセットします。互いに重ねて叩くと『チッ』と言うシヤープな音がして、少し開いた状態で叩くと2枚のシンバルが互いに触れ合い『チャー』と言った独特な音がします。

スネア・ドラムの左横にセットして演奏します。バスドラム同様にペダル・テクニックが重要です。ピンクパンサーの曲でおなじみの『チーチッチ・チーチッチ』はこのシンバルで演奏しています。



トップシンバル(ライドシンバル)
専用のスタンドに取り付けスモール・タムタムとフロア・タムの間(右斜前)にセットして演奏される大型のシンバル(18・20インチ)のことです。アクセントと言うよりも一定のリズムをキープする際に使われます。ジャズやバラードなどで大活躍するシンバルです。

サイド・シンバル<左>


サイド・シンバル<右>
サイドシンバル(クラッシュシンバル)
専用のスタンドに取り付けハイハット・シンバルの前奥とフロア・タムの右奥の2箇所にセットしてアクセントを付ける際に叩きます。大きさは大小さまざまですが、一般的に16・18インチを使います。

以上の楽器や部品が1つのセットとなってドラム・セットは構成されています。


ドラマーに必要な資質
前編でお話ししたスネア・ドラムを叩く時の基本技術やペダル・テクニックを使って、両手・両足はもちろん全身を同時に独立させて演奏する訳ですから大変な作業ですが、一人で全て行うからこそ、演奏者の個性や主張がストレートに表現され複雑なリズムも演奏できるのです。

つまり言い換えればドラム・セットを演奏することは、一人で打楽器アンサンブルを行うということになります。アンサンブルと言うことは各楽器のリズム・音質・音量のバランスを常に考えて演奏しなくてはいけません。つまり、ドラマーは演奏者であると同時に指揮者やミキシング・エンジニアでもあるのです。

現在ではリズムマシーンやコンピュータの発達により機械でかなりリアルに演奏を再現できるようになっています。そのリアルさは、厳密にプログラムすればプロの演奏家でも注意して聞かないと気が付かないくらいなのです。

ですからこれからのドラマーは正確さは勿論、グルーブ感(気持ち良いリズムの揺らぎ)やオリジナリティー(個性)が更にもとめられて行くことでしょう。そうなると一番大切なのは『ハート』つまり機械では表現できない生身の『心』や『感性』ということになります。ドラマーを目指しているキミ!テクニックだけではなくハートも磨きましょう。