※こちらはクラシックギターの音色です。
ギターと言っても、クラシック・ギター、フォーク・ギター、エレキ・ギター、セミアコースティック・ギター、エレアコなどなど…人それぞれ様々なギターを思い起こすのではないでしょうか。今回のおもしろ楽器館は、音楽のジャンルを問わず世界中で愛されているこれらのギターの元祖!「アコースティック・ギター」を紹介します。

アコースティック・ギターの種類 アコースティック・ギターの仕組み ギター共通の演奏法 アコースティック・ギターの歴史 アコースティック・ギターとは アコースティック・ギターの特徴 アコースティック・ギターの仲間 アコースティック・ギターに向いている人


左:フォーク・ギター
右:クラシック・ギター


アーチ・トップ・ギター

アコースティック・ギターの種類
アコースティック・ギターは一般的に、「フラット・トップのスティール・ギター」「アーチ・トップ・ギター」「クラシック・ギター」「フラメンコ・ギター」の4種類に分類されます。これらは全て同じ調律とコードを使用しますが、それぞれの種類には特有のフィーリング(感じ方)と音色があるので、実際にギターを学ぶ前に自分の好みに合ったものを選択することが大切です。それではここで、それぞれのギターの種類を見分けるポイントを紹介しましょう。(楽器選びの際に役にたちます。)

まずは、フラット・トップのスティール・ギターです。
フラット・トップとは、ボディの表面がまっすぐな板で作られているギターのことです。このタイプを代表するギターとして、フォーク・ギターウェスタン・ギターが上げられます。簡単な見分け方として、全ての弦がスティールであることやギター上部の糸巻きの「つまみ」の位置が横向きに付いていればこの種類のギターと言えるでしょう。

次にアーチ・トップ・ギターです。
アーチ・トップとは、ボディの表面の板が少し膨らみを帯びているギターのことです。代表的なメーカーとしてギブソンが上げられます。しかし、ビッグ・バンド・サウンドの人気の衰退とエレクトリック・ギターの普及率の急上昇に伴い、エレクトリックでないアーチ・トップ・ギターは非常に少ないのが現状です。
簡単な見分け方として、全ての弦がスティールサウンドホールがヴァイオリンと同様にアルファベットのfのような形状(fホール)をしており、エレクトリックでは無いギターであればこの種類のギターと言えるでしょう。

次にクラシック・ギターです。
昔は全ての弦がガット(羊の腸)で作られていたので、ガット・ギターとも呼ばれています。羊の腸は湿度によって伸び縮みが大きく、痛み易いことなどから、最近はあまり使われなくなってきています。簡単な見分け方として、ギター上部の糸巻きの「つまみ」の位置が後向きに付いていて、第1・2・3弦はナイロン、第4・5・6弦が銅線の巻かれたナイロン弦であればこの種類のギターと言えるでしょう。
ちなみに、フランス映画「禁じられた遊び」のテーマ曲「愛のロマンス」は、スペインの名手であるナルシソ・イエペスさんにより、このギターで演奏されました。

最後にフラメンコ・ギターです。
アンダルジアン・ジプシーの歴史と気質を反映したフラメンコの音楽には欠かせないギターです。しかし、このギターはクラシック・ギターの改造品であるため簡単に見分けられるようなポイントはありません。強いて言えば雰囲気でしょうか…。フラメンコ独特の音楽の活気や力強さを表現するために、クラシック・ギターに比べ明るいトーンの木材を使用し、ボディーの厚さなどの細かな改造がされています。

以上のポイントに注意して、楽器屋さんなどで本物を見比べる機会があったら、是非チェックしてみて下さい。また、フォーク・ウェスタン・クラシック・フラメンコなど、音楽のジャンル名がそのままギターの種類や呼び名として用いられています。これは、各ギターがそれらのジャンルと相性が良いという証明なのです。

ネック


サウンドホール


糸巻き
アコースティック・ギターの仕組み
ギターは一般的に弦楽器と呼ばれていますが、正式には「有棹撥弦楽器」(ゆうとうはつげんがっき)と言う楽器の仲間に分類されます。簡単に言えば棹(さお)のようなネック(演奏する際に左手で握る部分)を持った弦楽器のことなのです。
このネックには半音ごとに20本前後の金属のフレット(指板)がはめられています。

8の字型のボディー(胴)の表面に1個の大きなサウンドホール(響口)と言う穴が空いていて、弦の振動をボディー全体に響かせることで、豊かな音色を生みだします。

ネックの先端には糸巻きと言う弦のテンション(弦の張り)を調節するための機械ネジが取り付けられています。弦の本数は6本で、細い弦の方から第1・2・3・4・5・6弦と番号が付けられています。

各弦のチューニングは第1弦の方からそれぞれ「ミ・シ・ソ・レ・ラ・ミ」の音程に合わせます。材質は木材で、スプルース・マホガニー・ローズウッド・ナトー・エボニーなどの中から、表板・裏板・側板・ネック部とそれぞれの役割に最適な木材の種類を吟味して作られています。

ピック
ギター共通の演奏法
左手の指でネックを握りながら弦を押さえ、右手の指で弦を弾(はじ)き演奏します。

様々な奏法としては、爪で弦を弾いて演奏するピチカート奏法プラスチック製のピック(丸みを帯びた小さな板)を親指と人指し指で挟んでリズミカルに弦をかき鳴らすピッキング奏法、フォークソングやアメリカのカントリー音楽で登場するスリー・フィンガー奏法

また、フラメンコなどで小指から順番に素早く弦を叩いてゆくラスゲアード奏法など、音楽のジャンルに合わせて様々な奏法を使い分けて演奏します。また、右手で最初の音を鳴らしてから左指で弦上を滑らせてポルタメントを鳴らしたり、ハーモニクスでオクターブの演奏が出来たり、多彩な表現が可能です。

スペイン出身のギターの大家であるディオニシオ・アグアドさんが1825年に近代ギター奏法の原理を確立した教則本を発表し、ギター奏法の基礎が世界中の多くの演奏者に広まっていきました。因みに、この奏法は今日もなお用いられています。

アコースティック・ギターの歴史
ギターの発祥の地は、西洋ですか?東洋ですか?と質問されたら、多くの人達は西洋、特にスペインと答えるかもしれません。しかし、意外なことにギターの祖先は東洋からもたらされたと言われています。簡単に言えば「東洋生まれの西洋育ち」と言うわけです。東洋の中でも中近東のアラビアの商人がヨーロッパやスペインにギターの祖先を持ち込んで、様々に進化を遂げていったと考えられています。起源は大変古く10世紀のスペインの文献や13世紀のヨーロッパの細密画にその存在を確認することが出来ます。

西洋のルネッサンス期である15世紀に、大衆の間で広まったギターは、現在のギターと構造も異なる複弦4コース(2本ずつ張られた弦が4セット)のルネサンス・ギターでした。同時に貴族の間ではビウエラ・デ・マノと言うギターが広まっていました。つまり、大衆のギター・貴族のギターと身分に合わせてそれぞれのタイプが人気を集めてたのです。

その後、バロック期と呼ばれる16〜17世紀に入り、複弦5コース(2本ずつ張られた弦が5セット)のバロック・ギター(別名はリュート)が全ヨーロッパ中で脚光を浴び、それまでのギターが忘れ去られて行きました。

しかし、古典派期と呼ばれる18世紀後期には「バロック・ギター(リュート)の音楽は芸術的にも完成されてしまった」つまり、「限界に達して行き詰まってしまった」という理由から、その栄光も空しく衰退して行きました。そして、これを期にまだ無名だが様々な可能性を秘めた6単弦の古典ギター(現在のギターと同じ6本の弦)に再び、聴衆の脚光を浴びるようになって行きました。古典ギターは人々の間で大変盛んになり、特にフランスの宮廷でも愛好されました。当時の画家の風俗画にも、その人気の程が残されています。

ロマン派期から近代の19世紀に入り、スペインのアルメリア出身のアントニオ・トーレス・ジュラードさんがそれまでのギターを集大成して、現代ギターの構造における基礎を築き上げました。つまり、スペインで現代の「クラシック・ギター」の原形が完成された訳です。

一方、ドイツ東部出身で家族でギター製作に関わっていたクリスチャン・フレデリック・マーティンさんが1833年にアメリカのニューヨークに渡り発明したギターが、現在最もポピュラーに使用されている「フォーク・ギター」です。つまり、アメリカでこのタイプのギターの原形が完成された訳です。ちなみに、このマーティンさんのギター製造メーカー「マーティン」は現在の日本でも有名ブランドとして人気を集めています。

フォークギターの音色をこちらから聞けます。
フォークギター REAL AIFF

アコースティック・ギターは、構造やスタイルが完成されてしまったヴァイオリンやチェロなどと異なり、このような歴史を経た現在も世界各地で活発に進化しています。様々なメーカーや職人の工房から、音楽のジャンルや時代のニーズに対応できる新しいタイプのギターが生み出されているのです。

エレキ・ギター



ピックアップ・マイク
アコースティック・ギターとは?
アコースティック・ギターとは、20世紀に入りエレキ・ギターが発明されたことにより、それらと区別するために生まれた呼び方です。そもそもエレキ・ギター(正式名はエレクトリック・ギター)とは何かと申しますと、ボディー自体にピックアップ・マイクが内臓され、アンプにつながないと小さな音しか出ないギターのことです。それに対してアコースティック・ギターは、ボディー自体が共鳴する箱になるように設計されているため、アンプがなくても充分な音量と豊かな音色がします。

つまり簡単に言えば、停電になってもしっかりとした音が鳴るギターは全てアコースティック・ギターと呼べるのです。

カポタスト
アコースティック・ギターの特徴
何と言っても最大の特徴は、手頃な大きさで楽器が軽く持ち運びに便利な点と、ソロは勿論、伴奏楽器としても使用できる点があげられます。

特に「弾き語り」(一人で歌いながら伴奏する)楽器として最適です。歌だけでは何となく寂しい時など、トニック機能コード(1度の長調=C・短調=Am)・サブドミナント機能コード(4度の長調=F・短調=Dm)・ドミナント機能コード(属7の長調=G7・短調=E7)の6個のコード(和音)を鳴らす指使いを暗記してしまえば、取りあえず簡易的な伴奏ができてしまいます。

また、カポタストと言うネックに取り付けてフレットを押さえ付けるアクセサリーを使えば、どんな調の音楽でも同じ指使いで演奏ができてしまう点も最大の特徴として忘れてはいけません。

このような優れた特徴に、演奏しながら歩き回れたり、立っても・座っても・踊っても演奏ができたり、他の伴奏楽器に比べ価格が手頃であるなどの要素を加えれば、もしかしたら全ての伴奏楽器の中で最もポピュラーで多様な楽器と言えるでしょう。

バラライカ



アコースティック・ギターの仲間
「あ〜っ、あ〜やんなっちゃ〜った」でおなじみのウクレレもポルトガルのギターを祖先とする仲間です。
そして、16〜17世紀を中心にヨーロッパの全ての国で愛用されていた中近東生まれのリュート(バロック・ギター)
ロシアの民俗楽器で3本弦のバラライカ
意外になことに、日本の月琴や三味線、琵琶(びわ)もアコースティック・ギターの仲間なのです。

アコースティック・ギターに向いている人
すらりと指が長くその指が横に大きく開く人で、爪のお手入れが大好きな人。性格的には繊細で内向的な人が多いようです。(ハードロックやヴォーカルがメインの人達は例外?)

初歩的、または簡易的な演奏は極めて容易ですが、中級以上のレベルを身に付けるためには、立ち塞がる技術的な壁を越えるための非常な修練と根性が必要です。ギターの神様レベルを目指すなら、お寺で修行をしている僧侶のような、ストイック(禁欲的)な人にならないと難しいかも…。