ウルトラセブンの主題歌の中で「セブン!セブン!セブン!プァオ〜」とゾウの叫び声のように轟(とどろ)くあの音は(分からない年令の人もいるかしら?)実はホルンだったのです。今回のおもしろ楽器館は、オーケストラはもちろん、ブラスバンドや金管アンサンブル、また金属で作られているのにもかかわらず木管5重奏の一員としても大活躍するホルンを紹介します。

ホルンの歴史 金管楽器の演奏法 ホルンの特徴と演奏法 ホルンの仲間 ホルンに向いている人


ホルンの歴史
ホルンは管楽器の中でフルートと共に最も古い楽器のひとつです。「ホルン」と言う言葉は「動物の角」を意味しています。もともとは原始的な形の「角笛」から発達したと言われていますが、直接の祖先は「コルノ・ダ・カッチャ」と言う狩猟の時に用いたホルンです。馬に乗って狩にでかけた時、後ろにいる人に信号や狩りの合図を送り易いように、ラッパの端が後ろ向きに作られたそうです。現在のホルンの朝顔が後ろ向きに付いているのは、その名残りだそうです。

12〜16世紀にまっすぐな形から現在の管を輪状に巻いた形態になり、17世紀に狩猟ホルンとして材質も金属になりました。これらのホルンはフランスで発展し、その後ドイツに広まり改良されて行きました。

金管楽器の演奏法
ホルンだけでなく金管楽器は全て、息を吹き込む楽器の先端部分に「マウス・ピース」と言う円錐の形をした歌口を取り付けます。

マウスピースを取り付けて吹く金管楽器は全て同様の原理で音を出しますが、演奏するには、まず奏者自身の上下の唇を合わせて息を吐き出します。その上下の唇の振動が音の源となります。この振動がマウスピースと管の中を通り、楽器の音になるのです。唇が楽器の一部分になる訳ですから、金管奏者は唇がアレないようにリップクリームを塗っていつも気を付けているのです。

金管奏者は上下の唇の締め具合によって音程を変える事が出来ます。しかし残念ながら“ドレミファソラシ”と唇だけで音階を吹く事は出来ません。それは倍音列といって一定の管の長さに対して、限られた音しか出せないからです。この事を解決する為に金管楽器はそれぞれ工夫がされており、それが楽器の特徴にもなっています。




















ホルンの特徴と演奏法
ホルンの管の途中には、長さの異なった管の付いた3個のヴァルブ(弁)が取り付けられています。このヴァルブを左手の指で操作して管の長さを変えることによって、音階を演奏できるようになっています。

このヴァルブが発明されたのは1815年頃で、シュレージエンのブリューメルさんとベルリンのシュテルツェルさんによって考案された「ピストン式」のものと、1830年代に考案された「ロータリー式」(回転弁式)のものがありますが、現在ではほとんどがロータリー式の楽器が使われています。

また、ヴァルブが4個付いたホルンを「ダブル・ホルン」と呼び、高音域と最低音の演奏が容易になったことから現在ではもっとも一般的に使用されています。

ホルンの特徴といえば、うずまきの様にまかれた長い管ですが、伸ばして測ってみると約2.8m〜3.7mもあります。この長い管のおかげで、ホルンは広い音域の音を出す事が出来ます。あまりに音域が広く、音域によって音の出し方もかなり違うため、オーケストラで4人ホルン奏者がいる場合、高音域担当奏者(第1、第3番奏者)と低音域担当奏者(第2、第4番奏者)に分かれていたりします。ホルンはとても難しい楽器なのです。

現在のホルンには、F管・E♭管・B♭管などの種類がありますが、これは管の長さの違いによります。F管の楽器がもっとも一般的に使用されています。

ホルンの特徴として忘れてはならないのが、マウスピースと反対側の管の先端に付いている朝顔のように大きく広がっている部分です。これ程広がっているのは、低音域の音を出し易くする為とも言われています。

ホルンを演奏するには朝顔に右手を入れて楽器を持ちます。そしてこの右手で朝顔の穴をいくぶんふさいだり開いたりする事によって、音質や音程を変える事が出来るのです。

ホルン独特の奏法に「ゲシュトプフト奏法」というのがあります。この奏法は、1750年ごろにドイツのホルン奏者アントン・ハンペルさんによってあみだされました。右手で朝顔を全てふさぐと音程が全音下がり、にぶい曇った響きになります。通常は、半分くらい開けた状態にしておきます。

ホルンは楽器を構えると朝顔が後ろ向きになるので、ステージでは前方の客席では無くステージの後ろに向かって音が鳴ります.。

直接音を聴きたい場合は演奏者の後に行って聴かなくてはなりません。つまり、客席で聴いている人は、ステージ後方や側面の壁や床に反響した音を聴いているのです。ホルンの音色が山々や渓谷に響きわたるような広がりのある柔らかな音に聴こえるのはこのためなのです。

金管楽器の中で唯一、木管5重奏のような木管アンサンブルにレギュラーで参加できるのも、このようにもともと鋭く華やかな直接音を壁や床に反響させることにより、ホルン独特の柔らかな音が出せるからなのです。

ホルンの仲間
ヴァルブの無い自然ホルンの仲間としては、2オクターブにわたり5音しか出せず、楽器の長さが約4mもありアルプスやピレネーの牧夫が牛や羊を呼ぶための合図として使われていた素朴な木製の民俗楽器「アルプホルン」などがあります。

ホルンに向いている人
ホルンは音域が広く、柔らかい音色が出る楽器なので、メロディーを奏でたり、伴奏(吹奏楽などの曲では後打ちパートを担当するなど奏者にとってはつまらない役どころ)にまわったり、低音部で音楽を支えたりと多くの役目を持っています。そのため状況に合わせて役目をこなす辛抱強さ、バランス感覚と繊細さが必要といえるでしょう。実際には、ユニークなキャラクターを持つホルン奏者が多いように思えるのですが…。