今回のおもしろ楽器館はオーケストラの音合わせ(チューニング)の時に無くてはならない木管楽器の『オーボエ』(oboe「英」・Hoboe「独」・oboe「伊」)を紹介します。オーボエはフランス語で『hautbois(オブワ):高音の木』と言う意味です。その理由は、オーボエは木管楽器の中で主に高音部を担当するからだと言われております。

オーボエの歴史 オーボエの仕組み オーボエの特徴 オーボエの仲間




オーボエの歴史
歴史については大変古く、発生場所はヨーロッパやアジアなど広範囲にわたります。

西暦前2800年の時代に既に2本の管をもったシュメールの複管オーボエがありました。また、これに類似した楽器で古代ギリシアの彫刻にも刻まれているアウロスや、イスラエルやエジプトのハリルなどがあります。東洋では中国のクアン、日本では雅楽でおなじみの篳篥(ひちりき)もオーボエと同族の楽器なのです。

このように2枚の植物製の茎(くき)を使って音を出すオーボエ族(オーボー族)は、西暦前から世界中の民俗や文化の中でそれぞれ独自に発生し発達を遂げ人々の生活の中に浸透して行きました。

つまり、現在のオーボエを代表とするオーボエ族の楽器達は、私達人間にとって最も関わりの深いリード楽器と言えるでしょう。動物でいえば世界中のさまざまな種類の犬や猫といったところでしょうか。

3つに分解したオーボエ


オーボエ<上>と
クラリネット<下>
オーボエの仕組み
材質はクラリネットと同じグラナディラと言う表の皮以外は黒色をした不思議な木で作られています。楽器の長さは約70cmでその形状は写真のように、上部より下へ少しずつ太くなる円錐型(えんすいけい)をしています。本体は上部管・下部管・ベルの3部分に分解できます。

発音原理としては、ダブル・リード(2枚のリード)を唇にはさんで空気を吹き込み発音された振動を指やキーを使い楽器本体の複数の穴を開閉することで音程を生み出し演奏します。オーボエは移調楽器では無い(C管)のでド(C)の音を吹くとピアノの鍵盤と同じド(C)の音が鳴ります。

オーケストラの音合わせ(チューニング)の時はラ(A)の音を吹き、この音を基準に他の楽器が音程を調整して調和のとれたオーケストラの響きを生み出しているのです。つまり、オーケストラでは音叉(おんさ)の役割もはたしているのです。



オーボエの特徴
オーボエの特徴としてダブル・リード(2枚のリード)が上げられます。他のリード楽器と同様に葺(あし)の茎で作られた2枚重ねの小さなリードをステープルと言う金属製の細い円錐管(えんすいかん)の先端に縛りつけ、楽器の上部管の先端にある細い穴にこれを取り付けて楽器全体に息を吹き込むのです。

ストローのように息の取り入れ口が細いため他の楽器よりも少ない息で演奏ができます。たくさんの息を必要とする長い音符やフレーズを演奏する時は大変有利な楽器です。

しかし、オーボエの音色はこのダブル・リードの善し悪しで決まってしまうため演奏家は自らオリジナルのリードを自作します。当然オーボエを勉強する生徒さんは先生から良いリードを作るための方法やコツも習います。演奏家の人達は練習をする時間よりもリード作りをしている時間のほうが長いと言う話を良く耳にします。それくらいこのリードは良い音を出すために重要なものなのです。

オーボエの仲間
オーボエの仲間でヨーロッパで活躍した楽器として約1720年ごろ出現した『オーボエ・ダモーレ』があります。この楽器はバッハが音色を好んで作品にしばしば用いたほどでした。オーボエよりも短3度低く大きさもオーボエよりも少し大きいのが特徴です。

他にオーボエ・ダモーレよりもさらに大きく約81cmの大きさで、オーボエよりも5度低い『イングリッシュ・ホルン』などもあります。また、イングリッシュ・ホルンよりもさらに大きくオーボエよりもオクターヴ低い基音をもつ『バリトン・オーボエ』や交響詩”ツァラストラはかく語りき”の作品でおなじみの作曲家のリヒャルト・シュトラウスが楽器職人のヘッケルさんにバリトン・オーボエの改良を依頼して1904年に完成させ、日本に2台しかない『ヘッケルフォーン』などがあります。

最後に、オーボエを吹ける人は日本の雅楽をはじめ世界中の音楽にチャレンジしてみましょう。哀愁のある人間の声によく似たオーボエの音色は、きっとどの国の民謡や民俗音楽でも相性が良く表現できることでしょう。