今回のおもしろ楽器館は、”小さながちょう”という意味を持つオカリナ(オカリーナ)を紹介します。最近ではオカリナはテレビ番組のテーマ曲に使われたりなど、その音色を耳にする機会も増えてきました。

オカリナの歴史 オカリナの仕組み オカリナの演奏法 オカリナの仲間 オカリナの特徴 オカリナに向いている人






オカリナの歴史
オカリナの歴史は非常に古く、オカリナと同じような原理を持つ笛は紀元前から存在していました。

紀元前3000年のメソポタミア文明の中にも見い出すことが出来ますし、中国の古代楽器にフン、またはケンと呼ばれる吹き口の無い壷(つぼ)形の陶製の笛があります。

古代ギリシャには陶製のたて笛アウロス、連筒形のシリンクス、南米に4つ穴式のオカリナがあります。

古代の日本にも存在しました。
パキスタンから発掘された笛などから、古代イラクのメソポタミアから、パキスタンを通って中国、朝鮮、日本へと伝わったのかもしれません。

古代のオカリナは主に神事や儀式などに使われていたようです。このように、世界中にオカリナの原形と思われる笛が存在する為、確かな発生地域や起源を限定することは難しいと思われます。

現在のオカリナは1860年頃イタリアのボローニャ近郊に位置する、ブドウリオという小さな村の菓子職人であったジュゼッペ・ドナーティさんによって考案され、西洋の音階が演奏できるようになりました。

この素朴な温かい音色を持つオカリナを、チロルの放浪詩人たちがヨーロッパに伝え、音楽の都ウィーンからドイツ、フランスそして世界中に広まりました。

1928年、レル民族楽器研究所がピッチ(振動数=440Hz)が正確な12穴式オカリナを作ることに成功し、ソロあるいは合奏で活躍できる楽器として発展しました。

息が抜ける穴


ベッコ


タブレット


タブレットのベッコ
オカリナの仕組み
オカリナはリコーダーと同じ発音原理を持ち、ベッコ(吹き口)の下方に息が抜ける穴があいています。
(この穴は音程を作る指穴ではないため、ふさぎません。)

良質な土(陶器)で作られた壷(つぼ)を共鳴させて音を出します。壷は閉管になっているため、こもった音色がします。

ベッコは突き出ていて、長時間吹いていても吹き口や内部に水滴が溜まることがありません。

指穴は卵型角型の6〜8個、小鳥あるいはサツマイモ型(アメリカの口語では「スイートポテト」と言われている)の9〜10個、日本で発明されたオカリナは11〜13個、タブレットと呼ばれるオカリナは18個あります。



オカリナの演奏法
一般的な12穴式オカリナの音域は1オクターブと5音(タブレットの場合は2オクターブと3音)です。

運指は右手は内側からかぶせるようにして、左手は外側から支えるようにして持ち、ベッコから息を吹き込みます。空気がもれないように指を正確にふさがないと、正しい音程を出す事が出来ません。

また、吹き込む息の強さによって音程を変化させることが出来ます。息を強めるとピッチが高く、弱めると低くなり、半音位の音程差をつける事が可能です。

オカリナの仲間
アンサンブルの中で最高音を受け持ち、透明感のある音色を持つC管ピッコロ、独奏用としても使われ、明るい曲調に向いているG管アルト、メランコリックな曲調をに向いているF管アルト、最も活躍の場が多いC管テナー、甘い柔らかい音色を持ち、合奏では内声を担当するG管バス、F管バス、C管バス、一般的には最低音域を受け持つF管グレードバス、豊かな低音が魅力のC管コントラバスがあります。


オカリナの特徴
オカリナは粘土を焼き上げる時の収縮率によってピッチが上がってしまうこと、また粘土によって収縮率が違うということから、ピッチの設定が非常に難しいとされてきました。

素焼きのものが一番多く、白地に藍色の模様入りの本焼きのものの他に、ねりもの、金属のものもあります。しかし素焼きではもろく、本焼きでは収縮率が大きすぎてピッチが安定しない為、イタリア産の「テラ・コツタ」という特殊な粘土で焼くことが最高とされています。

また、自分の手の大きさや指の太さに合わせて設計することも出来ます。

オカリナに向いている人
オカリナはあまり音が大きくなく、音域も広くありません。現在使われている吹奏楽器は、「もっと大きな音が出せて、もっと広い音域が出せて…」と改良を重ねられてきたものが多くあります。

しかし、たくさんの音楽が溢れている今日ですから、あえて素朴な楽器に…という方にはオススメです。息の強さによって自由自在に音程や音色を変化させることが出来るということは、より多彩な表現が可能ということでしょう。

新境地を開拓してみたい方は、是非どうぞ!!