今回のおもしろ楽器館は、どんな音でも演奏できちゃう、「サンプラー」と言う電子楽器を紹介します。

サンプラーの歴史 サンプラーって何? サンプラーの演奏法 サンプラーの特徴 サンプラーに向いている人



サンプラーの歴史
サンプラー(Sampler)は、「サンプリング」(Sampling/抽出=抜き取る)が語源となっています。つまり、音を抽出する装置と言うわけです。

1948年のトランジスタの発明以降、エレクトロニクス時代を迎え、集積回路やデジタル技術、更にはコンピュータの発達により近年誕生したハイテク楽器なのです。現在、パソコンソフトの会社を含め、さまざまなメーカーが活発に研究・開発を行っています。

パソコン・ショップで「サンプリング・ソフト」と言う言葉を耳にしますが、これらのソフトの基本的な機能は「サンプラー」と同じです。つまり、サンプラーがなくても、これらのソフトを使えばパソコン上でサンプラーと同等の作業ができるわけです。
サンプラーって何?
<注意>電子楽器やコンピュータに弱い方は、ここを飛ばして下記の【サンプラーの特徴】をお読みください。

1秒間に44,100回という驚くべき「レート」(比率)で「サンプリング」(抽出)した音をアナログ信号から「デジタル信号」(0と1の2進法の信号)に変換して、「サンプル」(抽出した音)を「ランダムアクセスメモリー」(RAM・一時的に情報を記憶する装置)内で「エディット」(編集)することができます。

また、エディットしたサンプル(デジタル化された波形)をMIDIコントローラーやMIDI規格対応のキーボートによって、発音し演奏することができます。これらのサンプル情報はフロッピーディスクやハードディスクなどに「セーブ」(記録保存)したり再び「ロード」(読み出し)することができます。デジタル信号のまま音を記録・再生できるので、何度「コピー」(複製)をしても音が劣化することはありません。

サンプリングした音をエディットすることにより「サンプルのチューニング」(抽出した音の音程を合わせる)や「ループ」(音を何度もくり返す)また、「リバース」(逆再生)、「タイムストレッチ」(時間の圧縮・伸張)などの多彩な音作りが可能です。

この他、「モジュレーション」(簡単に言えばビブラートをつける)や「ディレイ」(簡単に言えば山びこのような効果をつける)などの「エフェクト」(効果)も可能です。既製のライブラリーソフトを購入するだけでさまざまなメーカーの複数の「トーンジェネレーター」(音源装置)の音色をサンプラー1台で再現できます。このように、サンプラーは大変便利で画期的な電子楽器なのです。

「×××」といった専門用語がたくさん出てきましたがサンプラーに限らず、現在の電子楽器やパソコンの音楽作成ソフトを扱う上で大変重要な用語なので、興味のある方はこの機会に覚えておきましょう。

サンプラー背面MIDI接続端子


MIDIケーブル
サンプラーの演奏法
サンプラー自体に鍵盤がないタイプのものは、外部に接続した電子鍵盤楽器やコンピュータから「MIDI」Musical Insturument Digital Interface)と言う規格を使って外部機器により発音をコントロールしなければなりません。

つまり、サンプラー本体だけでは演奏ができません。鍵盤とスピーカー内臓のタイプでない限り、音響機器(アンプやミキサー)をはじめ発音をコントロールするためのキーボードやコンピュータが必要です。

しかし、驚くことに最近では「おもちゃ屋」さんでサンプラーを目にするようになりました。2〜3オクターブの鍵盤があり、切り替えボタンを押すとさまざまな動物の鳴き声で演奏ができたり、さらには自分の話した声をサンプリングして演奏できる幼児用の玩具楽器です。さすがにサンプルの編集や加工はできませんが、おもちゃと言ってもれっきとしたサンプラーです。

最近の子供達は幼い頃からサンプラーで遊び、親しんでいると言えるでしょう

ライブラリーソフト
サンプラーの特徴
生楽器の音はもちろん、人間の声や動物の鳴き声、更には雷鳴や飛行機のエンジン音などのさまざまな音をサンプリング(抽出)してキーボードで演奏することができます。さらに、サンプリングした音を編集・加工して、音程を付けることもできます。

また、さまざまな音色が記録されているライブラリーソフトを購入すれば、欲しい音色の入った高価なシンセサイザーを何台も購入する必要がありません。早い話が、カセットやMDに録音した音を編集・加工して演奏ができちゃう画期的な楽器なのです。

コンピュータとキーボード
サンプラーに向いている人
電気的なシンセサイザーの音色では物足りない人や、規制楽器の音色にとらわれずに音楽作りをしたい人。また、さまざまな生楽器をキーボードやコンピュータを使って、よりアコースティックなサウンドで表現したい人には向いていると言えるでしょう。

完全に使いこなすためには、多少の電子工学と音響学をはじめ、コンピュータの心得が必要です。これらの心得が全く無い人が購入した場合、使用説明書の意味を理解するのに大変な苦労をするでしょう。