今回のおもしろ楽器館は、木管楽器と金管楽器のそれぞれの優れた部分を足して2で割ったような木管楽器「サクソフォン」(サックスとも呼ばれる)を紹介します。

サクソフォンの歴史 サクソフォンの仕組み サクソフォンの演奏法 サクソフォンの種類 サクソフォンの特徴 サクソフォンに向いている人


サクソフォンの歴史
サクソフォンは今から約160年前の1840年頃(日本では江戸時代末期)、ベルギー人のアドルフ・サックスさんにより発明されました。発明者の名を取り「サクソフォン」と命名されたわけです。(生まれ故郷のベルギーのディナン市には「アドルフ・サックス通り」という通りまで存在します。)サックスさんは、もともとはバス・クラリネットの新しいシステムを研究しており、そのうちにサックスという楽器を発明したのです。

最初は「金属で出来たコントラバス・クラリネット」として、ベルギーの博覧会で紹介されました。「サクソフォン」と命名されたのは1846年にフランスのパリで特許が申請されてからのことです。サックスはフランスを中心に広まりましたが、それは当時の工業の中心地がフランスだった為、サックスの生産工場をパリに作ったことによるものでした。

サックスはその頃盛んであった軍楽隊の中で使用され、次第にオーケストラ曲の中にも取り入れられました。有名な曲ではG.ビゼーの「アルルの女組曲」や、M.ラヴェルの「ボレロ」、「展覧会の絵」等があります。

また、アメリカに渡り1920年代にはジャズで用いられ大活躍しました。驚くべき事は、1840年代に発明されたサクソフォンの形やキイのシステムなどが、当時の楽器と今の楽器では基本的にはほとんど同じという事です。それほど、発明された当時の設計が完全なものだったといえるでしょう。

木管楽器の中ではまだまだ歴史の浅い楽器ですが、現代的な優れた機能や音色を演奏家にたとえるならば、既成概念にとらわれない自由で前衛的(モダン)な若手演奏家と言ったところでしょうか。

サクソフォン<上>とクラリネット<下>のマウスピース


サクソフォン<上>とクラリネット<下>のマウスピース


リード。上からテナーサックス、アルトサックス、クラリネット


ボディに彫刻が施してある楽器
サクソフォンの仕組み
金属製で円錐形をしており、ボディ(本体)ネックマウスピースの3つに分けられます。

「マウスピース」(歌口)にクラリネット同様にシングル・リード(1枚のリード)を取り付けます。リードはクラリネットよりも少し大きくなります。発音構造がクラリネットと同じなので、クラリネットが吹ける人であれば取り合えず音は出せます。

ジャズ全盛期のサクソフォン奏者は、初めにクラリネットを勉強してからサクソフォンを学んだそうです。

サクソフォン本体の材質は金属で出来ているにもかかわらず、構造は木管楽器と同様です。楽器の分類では材質よりも機構が優先されるため、フルートと同様に金属製でも木管楽器として扱われます。

音域はアルト・サクソフォンで「ニ♭〜2点イ」、テナー・サクソフォンで「い♭〜2点ホ」です。(ちなみにボディに彫刻が施してある楽器がありますが、それはお洒落で施しているようです。)







オクターブキイ


ストラップ



サクソフォンの演奏法
右手の親指をフックにかけ、左手で管の上部、右手で管の下部に付いているキイを扱います。

運指はソプラノ・リコーダーと似ており、右手の小指から順番に離していくと、ドレミファソラシドを演奏することが出来ます。

キイには全てフタが付いており、左手の小指で4つのキイ、右手の小指で2つのキイを扱います。

また、左手の親指でオクターブキイを押さえると、1オクターブ高い音を鳴らすことが出来ます。

楽器が重い為(アルト・サクソフォン2.6?、テナー・サクソフォン3.4?)首から下げた「ストラップ」と言う首ひもに楽器を釣り下げて演奏します。

音を出す時は、上の歯を直接マウスピースに当て、下の歯に軽く下唇をかぶせてリードとマウスピースを包み込むようにして、息を吹き込みます。

アルト・サクソフォン
<左>
とテナー・サクソフォン<右>
サクソフォンの種類
一般的に使用されるサクソフォンは「アルト・サクソフォン」「テナー・サクソフォン」ですが、これらの種類以外に、更に高い音域から低い音域までを個別にカバーできる多くの種類のサキソフォンがあります。

高い音域を担当するサクソフォンからそれぞれの種類を上げて行くと、「ソプラニーノ・サクソフォン(E♭管)」、「ソプラノ・サクソフォン(B♭管)」、「アルト・サクソフォン(E♭管)」、「テナー・サクソフォン(B♭管)」、「バリトン・サクソフォン(E♭管)」、「バス・サクソフォン(B♭管)」、「コントラバス・サクソフォン(E♭管)」の計7種類に及びます。

これだけの音域を担当するサクソフォンがあれば、オーケストラ曲を含む全ての曲をサクソフォンだけで演奏が出来てしまいます。
サクソフォンの特徴
音色が高音部から低音部までバランス良くそろい、運指機構も優れており、演奏は比較的容易です。

ダイナミクスや表現力の幅も広く、他の木管楽器と比較すると最も大きな音量が出せます。また、金管楽器の鋭さと木管楽器の柔らかさの両方を兼ね備えた独特の音色は、サクソフォン最大の特徴と言えるでしょう。

ブラスバンドでは木管楽器と金管楽器の仲介役として欠かせない楽器です。

クラシック音楽の世界では、サクソフォンが発明される前に作曲された曲が多いためオーケストラなどでは出番の少ない楽器ですが、現在ではサクソフォン用に編曲された楽譜が多数出版されていますのでご安心下さい。


サクソフォンに向いている人
サックスといえば、やっぱりカッコイイ。

カッコイイものが好きで、自分のセンスをアピールしたい人はサックスを選ぶと良いでしょう。

ジャズやロック、クラシックなど、色々なジャンルでの活躍の場がありますが、オーケストラには特別な曲以外はサックスのポジションがありませんのでご注意を!