今回のおもしろ楽器館は金管楽器の王者として、ジャズやクラシック、更には演歌やポップスと音楽のジャンルを越えて大活躍するトランペットを紹介します。(ラッパのマークでおなじみのコマーシャルで演奏されるトランペットのフレーズは、実は日本の軍隊で「食事」の合図として使われていたメロディーだったそうです。)

トランペットの歴史 金管楽器共通の演奏法 トランペットの仕組み トランペットの特徴 トランペットの仲間 トランペットに向いている人

トランペットの歴史
トランペットの歴史は古く、紀元前にまでさかのぼります。
最も.原始的なトランペットは、木あるいは茎で作られた1本のストローのようなまっすぐな楽器でした。その歴史の古さは紀元前2000年のエジプトの絵画にトランペットが描かれていることで実証されています。

文化が進むにしたがって、吹き口と逆側にひょうたんや動物の角などを付けたものが表れ、この楽器を青銅や銀などの金属で作るようになりました。

もともとトランペットは音楽を演奏するための楽器と言うよりは、宗教的または軍隊や世俗的な場での合図や信号の音として使用されてきました。この頃のトランペットは現在のように音階を生み出すためのピストンやヴァルブ装置のない、極めて原始的で単純な1本の短い管(短管)だったのです。

音楽的に使用されるトランペットの始まりは、14世紀に金属製の長い管(長管)のトランペットの活躍によって始まります。

それから約300年後の17世紀の初めごろから奏法の発達と共に、旋律が奏でられるようになりました。この時代はバロック時代と言ってバッハやヘンデルが活躍していた時代です。

当時の演奏者は特殊な訓練により唇だけで音程を生み出し自由にあやつる名人芸を身に付け、超人的な演奏をすることによりトランペットの黄金期を創りあげました。この頃のトランペットは無弁トランペット(ナチュラル・トランペット)でした。

しかし、その黄金時代も長くは続かず、ヨーロッパの宮廷の衰退によるトランペット隊の解散が原因で、演奏技術の低下をまねいて行きました。その後のハイドンやモーッアルトの時代にはこういった名人奏者がいなくなり、そのため管の長さ(管長)の異なるあらゆる調のトランペットが作られるようになりました。

その後、1815年頃ヴァルブ装置が発明され、トランペットもヴァルブを取り入れることにより音域が格段に広がりました。しかし、当時の長管のトランペットにヴァルブを取り入れた為、指使いが非常に複雑になり19世紀末頃まで、ホルンを祖先に持つコルネットに金管楽器の王者の座を奪われていたのです。コルネットは短管にヴァルブを取り入れたことにより、音質の悪さにもかかわらず、敏速に音楽に適応することが出来ました。つまり、ヴァルブ装置の発明と共にようやくトランペットの基礎が完成されたわけですが、より複雑で鋭敏な反応を求めるようになってきた当時の音楽にトランペットは対応しきれなかったのです。

19世紀末にトランペットは長管のもつ壮麗で高貴な音質を手放し、短管であるコルネットをまねる決断により、優れた演奏性能と安定した音質を手に入れ、金管楽器の王者の座を再び奪い取ったのです。このような波乱万丈なドラマを経て20世紀に入ってから、ようやく現在のトランペットが一般化されました。

マウスピース
金管楽器共通の演奏法
金管楽器は全て、息を吹き込む楽器の先端部分に「マウス・ピース」と言う円錐の形をした歌口を取り付けます。

マウスピースを取り付けて吹く金管楽器は全て同様の原理で音を出しますが、演奏するには、まず奏者自身の上下の唇を合わせて息を吐き出します。その上下の唇の振動が音の源となります。この振動がマウスピースと管の中を通り、楽器の音になるのです。唇が楽器の一部分になる訳ですから、金管奏者は唇がアレないようにリップクリームを塗っていつも気を付けているのです。

金管奏者は上下の唇の締め具合によって音程を変える事が出来ます。しかし残念ながら“ドレミファソラシ”と唇だけで音階を吹く事は出来ません。それは倍音列と言って一定の管の長さに対して、限られた音しか出せないからです。この事を解決する為に金管楽器はそれぞれ工夫がされており、それが楽器の特徴にもなっています。
















トランペットの仕組み
トランペット真鍮(しんちゅう)と言う金属で作られた円筒管(朝顔のように外に開いている部分は円錐型)で、主となる管の途中に長さの異なった3本の短い管が取り付けられており、3個のヴァルブ(弁)によって主となる管との切り替えができるようになっています。このヴァルブを右手の指で操作して演奏します。

人指し指で押さえる管を1番管(押さえると1全音低い音になる)、中指で押さえる管を2番管(押さえると半音低い音になる)、薬指で押さえる管を3番管(押さえると1全音+半音低い音になる)と呼びます。

3個のヴァルブの組み合わせは全部で8種類あります。

3番管の長さは1番管と2番管を足した長さにほぼ等しいので、実際には7種類の組み合わせともいえます。

ヴァルブの様式には「ピストン式」の物と、「ロータリー式」(回転弁式)の物がありますが、現在はピストン式(たて式)のトランペットが一般的に使用されています。

ロータリー式(よこ式)の楽器は機構が複雑なため故障が多く、ドイツや東ヨーロッパのわずかな国で使用されているにすぎません。

ヴァルブを使用せずに演奏すると限られた自然倍音の音しか出せません。しかし、ヴァルブを押さえて管の長さを変える事で音階が演奏できるのです。

現在においてもトランペットは音程が不正確な楽器なので、唇や替え指(ピストンの組み合わせ)で音程の微調整をしなくてはなりません。

しかし、最近では1番管と3番管に「チューニング・スライド」と呼ばれる自由に伸縮させて管長の微調整ができる機能が考案され、これを使用して容易に音程の微調整ができるようにりました。

トランペットには、B♭管・C管・D管・E♭管・F管・G管などの種類がありますが、B♭管・C管の楽器がもっとも一般的に使用されています。

トランペットの特徴
トランペットの特徴といえば、華やかな音色とパンチのある鋭いアタック音をまず思い浮かべますが、それは円筒管で作られているからなのです。(金管楽器のホルン、フリューゲルホルンや木管楽器のクラリネットなど、柔らかい音色の楽器は全て円錐管で作られています)

また、クラシック、ジャズ、ラテン音楽、演歌、ポップスと幅広い音楽のジャンルで主役として大活躍しているのも最大の特徴といえるでしょう。
トランペットの仲間
小さなピッコロ・トランペットや大きなバス・トランペット、セレモニーでファンファーレを演奏するナチュラル・トランペット(飾りとして旗をぶら下げている)や軍隊ラッパ(信号ラッパ)を始め、フリューゲルホルンコルネットもトランペットの仲間です。因みにコルネットはオーケストラなどではトランペット奏者が持ち替えて演奏します。

トランペットに向いている人
一口で言えば、荒野の一匹狼のように群れで行動せず、孤独にたくましく、そしてカッコ良く生きて行くようなタイプと言うか…。まあ人間で言えば、協調性がなく目立ちたがり屋だが人一倍精神力が強く、努力を惜しまないタイプの人がトランペッターには多いようです。

ハートがドキッ!としたあなたはトランペットでスターになれる素質が有るかもしれません。天から与えられた貴重な素質や才能を生かすも殺すもあなたの精神力と努力しだいなのです。