「除夜の鐘には正しいつき方がある」ってほんと?
先生、明けましておめでとうございます。新世紀もよろしくおねがいしま〜す!
おめでとう。今年は21世紀最初の年だから、気持ちも新たに音楽の勉強もしっかりするんだよ。
は〜い。気持ちを新たにガンバリま〜す!
先生、さっそく質問があります。
今年の正月は大晦日の晩から家族で初詣(はつもうで)に出かけたのだけれど、除夜の鐘が強かったり弱かったりしていたのよ。鐘をつく人達が新人だったのかしら?
何をおっしゃるエリーゼちゃん!きちんと鐘をつく回数まで決まっておるのじゃよ。
煩悩(ぼんのう)
と言って、仏教で、心身を悩まし、悟(さとり)りをさまたげる欲望が人間には108個あると信じられておるのじゃ。だから、1年間の煩悩を鐘の音と共に消し去って、新たな気持ちで新年を迎えられるように108回鐘をつくのじゃが、107回を旧年中に、最後の1回を年が明けてからつくのが正式のつき方とされておるのじゃ。
驚いたわ。あの調子で108回もついたら疲れてしまうわね。
あっ、わかったわ!鐘が強かったり弱かったりしていたのは、旧年中に108回鐘をつき終えるためにあわててついたから疲れてしまって、つきかげんにむらができたのね。
またまた何をおっしゃるエリーゼちゃん!。鐘をつく力のかげんについてじゃが、これも正式に決められておって、強く(フォルテ)次に、弱く(ピアノ)と交互に強弱を付けながらついて行くのが正式のつき方なのじゃよ。疲れたからでは無く、きちんと決まり通りについておるはずじゃ。
強く、弱くと交互に鐘をつくなんて、なんだか音楽を演奏してるみたいね!
そうじゃろう。
それに、鐘をつく間隔まで正式に決められておるのじゃ。特に、最後の1回は間隔があきすぎても狭すぎてもいけないのじゃよ。つまり、つき始めから108回つき終えるまでのテンポをしっかり考えて鐘をついておるのじゃ。音楽のように指揮者やメトロノームを使う訳では無いので、完璧につくためにはかなりの修行が必要だろうね。
そうだったんだ…。
除夜の鐘をきちんとつくって大変な事だったのね。一生懸命みんなのために除夜の鐘をついているのだから、ありがたく聞かなくちゃね。
今年の大晦日にはこのようなことに注意して、感謝の気持ちを持って除夜の鐘を聴いてみると良いぞ。
ところで、ヨーロッパにも除夜の鐘はあるのかしら?
残念な事にヨーロッパにはこのような習慣はないのじゃよ。そもそもお正月と言う習慣がないのじゃ。日本のクリスマスがヨーロッパではお正月なのじゃよ。つまり、日本人の感覚で言えば、クリスマスとお正月がいっぺんに来るようなものじゃな。
因みに、ドイツではサンタクロースでは無く「ニコラス」と言う山男が表れて、プレゼントを子供達に配るのじゃ。
サンタクロースは万国共通だと思っていたのに…。ちょっとがっかりしたわ。
そうがっかりするでない。宗教や文化、風習が変われば新年を祝う形式も変わるのは当然じゃ。いずれにしても、新年に夢や希望を抱いて幸せになりたいと言う人間の気持ちは、世界中の誰でも同じなのじゃよ。
さあっ!
エリーゼちゃんも早く音楽で人の心を幸せに出来るよう、初レッスンを始めるぞ!