「松任谷由実」さんの音楽はどうして味わい深いのかしら?
先生、実は私も私のお母さんも「ユーミン」の大ファンなんだけれど、ユーミンの音楽はどうして味わい深いのかしら…。
そうじゃな。
最大の理由は歌詞じゃろうね。その時代の新しい理想の女性像や恋愛スタイルをモチーフに、物語や風景を文章としてイキイキと描写しておる。
つまり、音楽の中でお洒落なトレンディー・ドラマが音楽と一体となって進行しているのじゃよ。女性ファンが多いのもユーミンの設定する物語りの主人公に共感できるからじゃろう。
確かに音楽を聴いていて自分が物語のヒロインになった気がするわ。でもどうしてこのような歌詞が書けるのかしら…。
松任谷由実さんは美術大学出身なのは大ファンなら当然知っておるじゃろう。
えっ!そうだったんだ。
おいおい、それくらいは勉強しておかないとファンとは言えないぞ。
でも、美術と音楽がどう関係しているの?
音楽は絵画や美術品のように見たり触れたりすることができないから、聴いて心で感じ取り心で見て味わうものなのじゃ。ユーミンはこのことを最大のテーマにしておるのじゃろう。
美術の世界で養った感性や素養を、形のない音楽に生かしておるのじゃろう。聴衆の心のキャンバスに音楽で物語やメッセージで描いておるのじゃ。
音楽で聴衆の心のキャンバスに物語を描くなんて素晴らしいことね。
そうじゃろう。物語の設定やメッセージを音楽の歌詞にリアルに描き出すという意味では、ユーミンの歌詞は「描写的な歌詞」と言えるじゃろう。
例えば有名な「中央フリーウエイ」の最初の歌詞じゃが、「♪右に見える競馬場、左はビール工場」のように中央高速の下り線を都心から八王子に向かって走っている状況を歌詞として描写することで、物語にリアリティーを持たせ、聴衆が物語りの世界に入り込むきっかけを作っているのじゃ。
これはユーミンに多くみられる手法なのじゃよ。歌詞を勉強するうえで大切なことじゃろうね。
なんとなく分かったような気がするわ。他にどんな理由があるの?
なんといっても、松任谷正隆さんのアレンジ(編曲)だろうね。
松任谷由実さんのご主人がアレンジをしていることは知っているじゃろう。
えっ!そうだったんだ。ご夫婦で音楽を作っているの?
そうなのじゃ。
アレンジは音楽を作る上でとっても重要なのじゃ。メロディーはもちろん、歌詞に込められた想いやメッセージを生かすも殺すもこのアレンジにかかっておるのじゃよ。
アレンジを料理に例えるならば、食材の良い部分を最大限に生かして調理するようなものなのじゃ。
正隆さんは、奥さんであるユーミンの食材を良く理解しているからこそ、素晴らしいアレンジができるのじゃろう。つまり、例えるのなら正隆さんはユーミンレストランの料理長なのじゃよ。
な〜るほど。それでユーミンの音楽は味わい深いのね。
そうなのじゃ。
料理の話はあくまでも例え話しじゃが、ユーミンの人気が冷めず世代を越えてファンが多いのは、聴衆が無意識のうちにユーミン物語の主人公としてストーリーを楽しんでいるからなのじゃ。
ユーミン以外の歌手の人達が歌うと少し味わいが変わってしまうのは、物語りの主人公を演じる役者が変わってしまうからじゃろうね。つまり、当て書き(役者のキャラクターに合わせて台本を書く)だからなのじゃよ。
それだけユーミンの音楽は作家と歌詞と音楽が一体となっておるのじゃろう。
な〜るほど。
ユーミンの音楽に独特な味わいがあるのは理由があったのね。家に帰ったらもう一度新たな気持ちで味わってみま〜す。