ゲーセンってゲームセンターのこと?
ねえ、先生。オーケストラのコンサートの後で、楽屋へいった時のことなんだけど、団員の人達が『この間のビータのチケットはゲーセンだったのよ。』と話していたの。それって、どういう意味なの?
ゴホンッ!エリーゼちゃんは、そんな事知らなくてもよろしい。まだ、子供なんだから。
ええっ、どうして教えてくれないの?私が音楽家の人達とお話するとき困るじゃない!
仕方ないなあ。でも、これは親しい間柄の音楽家どうしで使ったりする言葉じゃから、間違ってもレッスンの時に先生に向かって言ったりするんじゃないぞ。約束出来るかい?
もちろん約束するわ。
では教えよう。『ゲーセン』っていうのは、ゲームセンターのことではないぞ。エリーゼちゃんは、“ドレミファソラシ”を国によって違った呼び方をすることは知っておるかな?
ええ。だってに勉強したもの。
おおっ、さすがじゃな。日本では、クラシック音楽を学んだ音楽家の人達は、“ドレミファソラシ”をドイツ語で呼ぶ習慣があってな。“ド=C(ツェー)、レ=D(デー)、ミ=E(エー)、ファ=F(エフ)、ソ=G(ゲー)、ラ=A(アー)、シ=H(ハー)”といって、これを〈ドイツ音名〉というんじゃ。
お医者さんがカルテをドイツ語で書くのに似てるわね。
そこでじゃ。まあ、言葉遊びのようなものじゃな。ドイツ音名で「ド」から「シ」までを数字に置き換えてみる。“C(ツェー)=1、D(デー)=2、E(エー)=3、F(エフ)=4、G(ゲー)=5、A(アー)=6、H(ハー)=7”
ということは、『ゲーセン』の『ゲー』って、5のことじゃない?
さすが!エリーゼちゃんは賢いのう。その通り。『ゲーセン』の『セン』というのは「一十百千万」の『千』のことじゃ。
とすると、『ゲーセン』というのは、『5千』という意味なの?
そうじゃ。この場合は『ビータのチケットは5千円だった』と言っておるのじゃな。
ふむふむ。ところで、『ビータ』って何?
まあ深く考えず『ビータ』という言葉をつずけて言ってごらん。
ビータビータビータビー。「タビー」?もしかして「旅」の事かしら。
そうじゃ。「ビータ」とは「旅(たび)」つまり演奏旅行というわけじゃ。
な〜んだ。ひっくり返した言葉だったのね。
そう。つまり、『この間の演奏旅行の時のチケット代が5千円だった』と言っていたんじゃな。
そうだったのかぁ。おもしろいわね。
数字をドイツ音名に置き換えたり、言葉をひっくり返して言ってみたりするのは音楽家どうしでしか分からない暗号のようなものじゃな。言葉を省略する略語もあるのじゃが、それは次回お話ししてあげよう。終わりに《クイズ》を出題するぞ、エリーゼちゃんも挑戦してみてごらん。
《クイズ1》『お客さまは2,580人でした』は、なんと言うでしょう?
《クイズ2》『トロンボーン奏者とタクシーで飯(めし)を食べに行った』
は、なんと言うでしょう?

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