さすが、わしの弟子じゃな。 ウィーンは、モーツァルト以外にもベ−ト−ヴェン、ヨハン・シュトラウス、シューベルト、ブラームス、マーラーなど多くの大作曲家が活躍し、世界最高峰の一つと言われるオーケストラ、ウィーンフィルも活躍する町じゃ。 当時の大作曲家達やウィ−ンフィルの人達もシュランメル音楽を聴いていたんじゃよ。
まぁまぁ、落ち着け。エリーゼにはちょっと早いが…。 ウィーンには「ホイリゲ」と呼ばれる飲み物があってな。その年にウィーンで取れたワインの新酒の事をそう呼ぶんじゃ。その「ホイリゲ」を飲ませる店で演奏されている音楽が「シュランメル音楽」なんじゃよ。 ちなみに「ホイリゲ」を飲ませる店の事も「ホイリゲ」と呼ぶんじゃ。
聴いてみるのが一番じゃがのぅ。 「シュランメル音楽」には、胸に染みるような美しいメロディーで気品のある曲や、踊りだしたくなるようなうきうきする曲や、笑い出しそうになるユーモアがあふれる曲など、色々な曲があるんじゃよ。 それのどれもが、いかにもウィーン風といった感じで心地よいんじゃ〜。ポルカ、マーチ、ワルツなど1曲が3分くらいの小品も多く、聴きやすくて楽しめる音楽なんじゃ。
もう一つ呼び方を教えておこう。 「シュランメル音楽」は二本のヴァイオリンとコントラギターとG管クラリネットかボタンアコーディオン編成で演奏するのじゃが、こういう編成で演奏する楽団の事を「シュランメルン」と「ン」をつけて呼ぶんじゃよ。 シュランメル兄弟以外の他の多くの作曲家もシュランメル風な曲を作っておるが、それら全部を「シュランメル音楽」と呼ぶんじゃ。今も新しい曲が作られているんじゃよ。 ウィーンの人々は「シュランメル音楽」を今も昔もウィーンの音楽として誇りに思い、大切にしているんじゃ。
日本ではじめてシュランメル音楽がLPレコードで紹介されたのは1985年(昭和60年)なんじゃ。 ウィーンフィルのメンバーによる「フィルハーモニアシュランメルン」が初来日したのが1987年。 まだ20年足らずでは、認知度が低いのじゃろう。しかし日本にも熱烈な愛好家は結構おるんじゃよ。
はっはっは。 ウィーンのホイリゲでに行けば演奏は聴けるが、それとは別にコンサート形式でシュランメル音楽を演奏する事もあるんじゃよ。 ウィーンフィルのメンバーによるシュランメル音楽のコンサートは100年以上前から行われているし、他にもたくさんシュランメルン楽団がコンサートをやっているんじゃ。
わしの遠い親戚のおじいちゃんであるベートーヴェンが住んでいたハイリゲンシュタットの近くにはホイリゲがたくさんあるぞ。 ベートーヴェンが生きていた時代にはシュランメル兄弟はまだ生まれておらんが、ブドウを栽培する農家がホイリゲを飲ませる店を持つ事を許されたのが1784年じゃから、きっとベートーヴェンもモーツァルトもホイリゲを飲んで、音楽を聴いていたに違いないじゃろうよ。
わしも聴きに行くとするか。楽しみじゃな。